2013年05月24日

ムスタキの死



歌手のジョルジュ・ムスタキ(Georges Moustaki)が亡くなった。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130524-00000035-reut-ent
僕が彼を知ったのが、今から約20年前のこと。
大学を中退してぶらぶら放浪生活を送っていた頃、中古レコード店で髭面の渋い顔にヤラれてジャケ買いした一枚のレコード。
それがジョルジュ・ムスタキだった。
ギリシャからエジプトへ亡命中だったユダヤ人夫婦のもとアレキサンドリアで産まれ、フランス系学校で教育を受け17歳でパリへ渡り、恋人となったエディット・ピアフの庇護のもとシンガーソングライターとしてのキャリアをスタートさせたムスタキ。
新潟の片田舎の代々続く農家のセガレという超ドメスティックな出自がコンプレックスだった当時の僕にとって、ムスタキは一瞬にして僕の憧れの存在となった。
彼は自らの出自の複雑さからくる「孤独感」を歌にした。
若かった僕も何とか彼のような「孤独感」を醸し出そうと、それっぽい音楽を聴き、それっぽい本もたくさん読み、そして旅にも出た。
(十代を通してまったくモテなかった僕が人並みにモテるようになったのも、この頃の鍛錬によるものだろう)
そして生まれて初めて旅をして一番驚いたことが、旅先に必ずと言っていいほどユダヤ人の若者たちがいたことだ。
なるほど、ムスタキの言う通りだった。
彼らは本当に「孤独感」と「連帯感」を胸に世界を旅しているんだと納得。
今よりさらにカタコト英語だった僕は、ありったけの語彙と知識を振り絞ってムスタキとかユダヤ系アーティストの話をしたような記憶がある。(それしかユダヤの知識がなかったから...)
ともかく、僕の第一次”旅人”時代はムスタキの歌とともにあった。

ムスタキ亡き今、僕にとって残された憧れのアイドルはレナード・コーエン(Leonard Norman Cohen)をおいて他はいない。
彼もユダヤ系カナダ人アーティスト。
ムスタキのレコードと共に買ったアルバム『Various Positions』は擦り切れるほど聴いた。
しかも当時より今のほうが、僕を構成する細胞というか素粒子レベルで振動が起きる。
彼のユダヤ人としてのアイデンティティ(過去との継がり)と禅僧としてのアイデンティティ(現在・未来との継がり)のバランス感覚が僕は好きだ。
あんな声にも憧れている。
数ヶ月前インドネシアからの帰りのこと、照明が落とされ息子も他の乗客たちも寝静まった機内で、機内音楽リストの中に彼の最新作『Old Ideas』を発見し独り聴いていた。
音楽を聴いて、久しぶりに涙が出た。
いつか息子も聴くだろうか。






posted by 岡昌之 at 12:21| Comment(0) | 父子旅 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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